ホールマーク刻印はどのようにして打たれるのでしょう〜イラスト・動画からわかる英国銀器

ホールマークの打たれ方
前回の記事でご紹介した、アセイオフィス分布図内の右側に描いてある絵です。画像内に説明がある通り、上の図は銀職人が工房で手作業によりスプーンの形を打ち出している様子(これは多分、古い時代からあまり変わらない光景ですね)そして下の絵は、現在イギリス国内に四箇所あるアセイオフィスのラボで職員が作業している様子です。
ラボでは銀の純度を調べたり、ホールマークを打刻したりしています。

右の男性が熱心に眺めているパソコンの画面には、Ag=銀 Cu=銅 Cd=カドミウムを示す元素記号が映し出されており、その前には金属のテストをする為の薬剤が並びます。 左の人物は、沢山のデートレターやメーカーズマーク(スポンサーズマーク)などのアルファベットが並ぶパンチの中から適正な物を選んで、手作業で丁寧に銀器に刻印を施しています。
アセイオフィスに持ち込まれた銀製品(シルバープレート=銀メッキ製品でなく、いわゆる純銀製品として製造された物)は職員の手で英国が定めるスターリングシルバー の基準に達しているかを一つ一つ検品され、無事検査を通過したもののみ、熟練した作業員によりホールマークが刻印され(以下で触れますが、現在はレーザーによるエッチング(2D 3D)のホールマーク刻印の仕方が主流になっていますが、レーザーの機械に入らない大きなお品などは未だ手作業で丁寧に一つ一つ刻印されます。)
現在もアセイオフィスでのホールマークの刻印作業について説明されているわかりやすい動画を見つけたのでご紹介します。(ロンドンのゴールドスミスホールのYoutube動画ですYoutubeは一応動画のシェアは自由ですのでリンクを貼らせて頂きます。動画リンク下に簡単に英語訳を記載しておきますので必要な場合はどうぞご参考下さい。時に意訳や省略部分があります)

銀の純度が確認されたら、いよいよホールマークが刻印される準備が整いました。

ホールマークの刻印の仕方は二種類
・ーつは、伝統的な、パンチとハンマーによるマーキングで、もう一つはレーザーによるマーキングです。
手作業により打ち込まれたマークは深さがあるので、その後の仕上げ磨きやメッキにも耐えられます。(既に仕上げ磨きをしてあるものや薄くデリケートな物には、この手作業での刻印は向きません)
・伝統的なホールマーキングは高い技術のある熟練工により、ハンマーとパンチ、または機械でのプレス(同じマークを数多くの品にプレスする場合)で行われますので、伝統的方法でのホールマークは長持ちします。(動画内では”Will last lifetime”と表現)
・パンチによる刻印により銀器が少し歪んだりしてしまう事があります。(特に大きなパンチの場合。どうやらマークのサイズや刻印する場所も好みにより使い分けられるようです)出来るだけこの症状を避けようと努力がなされますが、時にその後の調整を必要とする時があります。

★ここまでで動画の1:20くらいまでになり、その後は機械でのレーザーエッチングの説明が続きます。その説明もとても興味深い物ですが、アンティークとされる銀器の時代にはレーザーエッチングはまだ発明されていなかったので、ここでは簡単な説明のみで終わらせていただきます。★

手作業でパンッと大きな音を立ててリズム感良くホールマークが一つ一つ打ち込まれて行く様子は見ていて楽しいですね。
それぞれに大きさも形も重さも違う銀器一つ一つに刻印が押されて行く・・・ 昔(1784年-1890年)は今使われているマークに加えて税金を納めた事を示すデューティーマーク(ジョージⅢ世からヴィクトリア女王まで、それぞれの時代の王・女王の横顔)もそれぞれに刻印されていました。
一つ一つの銀器に重量によって異なる税金が課せられ、他ホールマークと同じ大きさで並んでそれを証明するマークが刻印される。やはり英国銀器は面白いですね。

こちらの動画も興味深いです。大体出てくる内容は上の動画と同じなのですが、検査に関してはより詳しく説明されています。(X-rayにより銀の純度の鑑別が行われるが、機械に入らないくらい大きな物の場合は目立たない部分から少し銀を削り取り機械にかけて調べる))

トレーの色がまだDull(輝きが鈍い)ですね。
先に出て来たように、手作業によるホールマーキングの場合はホールマークを刻印してから全体に仕上げ磨きをかける方が良いそうなので、この後綺麗に磨かれてピカピカに美しくなるのでしょうね。

以上、ホールマークの刻印の方法についてでした。

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