絵や本からでも当時の様子を垣間見る事は出来ますが、時代背景や当時の人々の生活様式について
映画を見る事で得られる情報ってとても多いですよね。アンティークの家具や銀器、そしてそれを使った当時の生活様式が垣間見れる映画
色々ありますが、
その中から今回は、映画「メリーポピンズ」の中で見つけた銀器のあるシーンをご紹介したいと思います。
薄暗い中に浮かび上がる、ビックベンとセントポールが美しいです~~
時代は1910年。銀行家のバンクスは子供をナニーにまかせっきりの、仕事一筋のお固い英国紳士。
といってもそこは英国、夜遅くまで働くわけではなく夕方六時丁度に帰宅してまずシェリー酒を頂くのが毎日の日課。
ここで銀のサルヴァ(銀盆)が登場です。
スクロールした脚のあるチッペンデールパターン(表面が鏡面状で装飾がなく、周りが角のある曲線になっているもの。英国ロココ時代に流行ったデザインの影響) のように見えます。
この頃は銀器以外には何も銀色の金属が他インテリアに使われていないせいか、サルヴァのデザイン云々よりその銀色に輝く質感だけで目を奪われます(現代の家はグレーのプラスチックや、ステンレスなどの銀色の電化製品 多いですよね)。
朝食の場面
バンクス氏は朝から気難しい顔。様々な案件で頭を悩ませています。
そんな悩める朝にも使用人が運んで来るあたたかい朝食とティーが優雅です♪
とても厳しい父親で夫のバンクス氏ですが、さりげなく奥さんにティーのおかわりを注いであげているあたりの描写に心温まります♪
時代は1910年ですからエドワーディアン期。
ヴィクトリア時代に好まれた女性的な華やかなデザイン指向も少し落ち着き、ちょっとシンプルな意匠のもの・ピアシングなどの繊細なデザインが多かったでしょうか。 それでもシルバープレートの物はいつでも華やかなものも多く作られていた気がします。
このセットはシルバープレートに見えます。 とってもかわいらしいティーセットですね。 個人的にはこのティーセットだけ見ても自分の生活には馴染まなそう と思ってしまいますが、映画の中で見ると素直にとってもかわいいと思います。
使用人エレンが運んで来るのはお料理の入ったエントリーディッシュ。この映画では何回か登場します。
今日の朝食は何でしょう
マッシュルームとベーコンに目玉焼き?
エントリーディッシュは、見た目が美しいのももちろん、とても保温性に優れているので当時は良く使われていたのかもしれませんね。
笑いが止まらなくてそのせいで天井から降りてこられなくなった(?)おじさんの場面
バンクス一家の子供ジェーンとマイケルも笑い、天井でのティーパーティーのお仲間になります。
ここでは陶磁器製のティーセットが使われています。
上流階級では銀器のティーポットも陶器のティーポットも好みで使い分けられるのでしょうが、当時はシルバープレートのものでも高級品、到底一般の人々に普通に使われるようなものではなかったそうです。元々シルバープレートはヴィクトリア時代に急増した中産階級から流行したようです(中産階級と言っても日本の「普通」の感覚ではないんですよね・・・ この、バンクスさんのお家! インテリアも凄いし使用人は三人。バンクスさんは銀行の中ではそれほど高い地位ではないのですが)。
実際には現代の暮らしでは、上流階級でも普段の生活では銀器を使うという人は少なくなっているようです・・・知り合いの貴族の方のお宅ではティーセットは陶磁器製。 銀のティーセットは使われていませんが、シンプルなジョージアンの純銀のカトラリーのセットを使われていました。なぜ銀のティーセットを使わないのですか? と聞くと、磨く手間がかかる との事でした^^; でもまた別の貴族の方のお家では、ジョージアンの銀のティーポットが使用されていました。(彼らの家には沢山の使用人がいました。代々伝わるファミリーシルバーも沢山あるそうです)
1910年が舞台の映画といっても(映画が実際に作られたのは1962年)人々の服装以外は街並みもインテリアも、殆ど今と変わりないように見えます。1912年はタイタニックが沈没した年ですね。ダウントンアビーの頃とも時代設定が近いですね。
小さい頃からこの映画を良く見ていましたが、昔の映画を見ている という感覚なく見ていました。
今と昔 自然も街並みも、当時と殆ど景色が変わらないという事。
英国に住んでいる今は時々当たり前のようにも感じてしまいますが、皆で力を合わせて守る努力をしているからこそ。 すごい事ですよね。
この中に浮かぶ愉快なおじさんのお家
内装がとってもDated(年季が入っている)ますよね。
英国では古い家の方が一般的に新しい家よりも価値が高く、手入れして数百年住むのですが(その為数十年住んだ後でもほとんど価値が変わらない または価値があがるとされ、投資目的で購入する人も多い)市場には良く
「Need a modernisation」
という同じ大きさの修理不要な物件よりもだいぶ割安な物件が出ており、これは修理や内装のやりかえが必要であるという事を意味しています。私たちの感覚からすると時間もかかるし面倒くさいので修理不要の物件を探してしまいますが、人に頼まず自分たちの手で修理していくと家の価値がど~~んと上がる事もあって結構人気があります。
そんな物件の修理前の内装は大体このおじさんの家のような感じ(笑)
イギリスの家は、このエドワーディアン期位の家は未だ現存する場合が殆どですから、今ももしかしたらどこかにこのおじさんのお家もあるのかもしれない(実際にはセットだと思いますが)と想像するとワクワクします。
最後にすこしだけ・・・
この映画で私の心に一番心に残る場面、それはメリーが子供たちにセントポール大聖堂の前でハトの餌を売るおばあさんの歌を歌う所なのですが。
ディズニーのスノーボウルは大体映画のキャラクターもお人形になってついているものが多いですが、これは映画のものと全く一緒。
数年前に限定で発売されましたが今は幻のアイテムになっているようです(ebayで過去に5,6万くらいで取引されたとか。その値段を出しても今は手に入らないでしょうね・・・)。
ず~~っと夢見ていたのですが、最近アンティークカードで素敵なものを発見。
ハトが飛んでいるあたり、雰囲気そっくりじゃないですか。
タイトルは
「From an editor’s window」
今はこれを見てうっとり満足してます。
でもいつかは欲しいなあ、スノーボウル・・・
映画って、その時その時の自分の興味などで見るところが違って来るのが面白いですね。
皆さんも当時の人々の生活がわかる素敵な映画ご存知でしたら是非教えてください^^